「抱っこで始まる、人生の最初の安心」〜花音保育園・西田代表が語る、“丁寧な保育”のかたち〜

子どもにとっての“最初の社会”を、あたたかく

保育って、子どもにとっては“社会に出る最初の場所”なんですよね。
だからこそ、そこで「安心できる」と感じてもらうことがいちばん大事だと思っています。

私たち花音保育園は、奈良県天理市にある小さな保育園です。
でも「小さいからこそ、ひとりひとりを丁寧に見つめられる」。
それがうちのいちばんの強みだと思っています。

 

母子同園という選択肢

うちの園では、“母子同園”といって、自分の子どもを同じ園で預けながら働くことができます。
よその園では「お母さんがそばにいたら子どもが甘える」と敬遠されることも多いのですけど、私はそれでいいと思ってるんです。

お母さんがそばにいることで、子どもは安心する。
お母さん自身も、子どもの園での姿を見られる。
それって、どちらにとっても大きな安心だと思うんです。

もちろん、職員みんなで気を使う場面もあります。
でも、「子育てと仕事を両立したい」人が、ちゃんと働ける場所にしたい。
保育って、誰かを支える仕事ですけど、同じように“働くママを支える”場所でもありたいと思っているんです。

体調不良児保育を始めた理由

花音保育園では、体調不良児の受け入をしています。
登園後に熱がでたり、少し体調が悪くても、できる範囲で預かる取り組みです。

きっかけは、私の姉が看護師として働いていた頃の経験で、
夜勤が続いたり、過労で体調を崩したりして、心身ともにすごくしんどそうでした。
その姿を見て、「働くお母さんが少しでも安心して働ける場所を作りたい」と思ったんです。

もちろん簡単なことではありません。
でも、「しんどい時こそ助け合える園」でありたい。
保育って、子どもを預かるだけじゃなくて、家庭を支える仕事でもあると思うんです。
だから、体調不良児の保育は、うちにとって“やさしさの延長線”みたいな取り組みです。

■“丁寧な保育”ってどういうこと?

うちが大事にしているのは「丁寧な保育」です。
でも、“丁寧”って言葉だけ聞くと、なんとなく上品で静かなイメージを持たれるかもしれません。
私が言う“丁寧”は、そういう意味とはちょっと違います。

どんなに小さくても、子どもはひとりの人間。
泣いたり、噛んだり、押し合ったりしながら、ちゃんと社会を学んでる。
そこに「いい」「悪い」を決めつけるんじゃなくて、
どうやったら安心してその経験を積めるかを考えるのが、私たちの役目じゃないかなって思うんです。

先生たちにもよく言うんです。
「怒るのではなく、愛情込めて叱ってあげてね」って。
ダメなことはちゃんと伝える。
そこに“愛情”を込めることが丁寧さやと思うんです。

■“ならし保育”は、子どものための時間

お母さんたちは、仕事復帰のタイミングに合わせて「4月から預けたい」と言われることが多いんです。
でも、子どもにとってはその切り替えがとても大きな変化なんです。

だから私は、「3月から少しずつ慣れていきましょう」とお伝えしています。
最初は1時間だけ、一緒に過ごすところから。
そこから少しずつ時間を延ばして、子どもが安心できるようにしていく。
それが“慣らし保育”です。

大人の都合だけで進めてしまうと、どうしても無理が出てしまう。
泣いたり、風邪を引いたり、体調を崩したりするのも自然なことです。
だからこそ、子どものペースに合わせて進めてあげてほしいなって思っています。

準備を丁寧にするのは、お母さんのためじゃなくて、子どものため。
子どもの「ここなら大丈夫」という気持ちを育てる時間やと思っています。

足育(あしいく)へのこだわり

子どもたちには、しっかり体を使って育ってほしい。
その思いから、足育(あしいく)にも取り組んでいます。

実は、私は介護の仕事からスタートしていて、
「足のゆびをしっかり使うことが、体のバランスを整える」と感じてきました。
だから保育でも、裸足で過ごしたり、足指を動かす体操を取り入れたりしています。

子どもの足って、まだ軟らかくて、どんどん形が変わっていく。
だからこそ、今のうちに“自分の足でしっかりと立つ力”を育ててほしいんです。

「はいはい」をたくさんするのもすごく大事。
頭を支えたり、体幹を鍛えたり、すべてつながってるんですよ。
じっとしてるより、動いて見て感じることが、子どもたちの世界をどんどん広げていくんです。

音育(おといく)で育む、想像する力

もうひとつ大事にしているのが音育(おといく)です。
ヤマハ音楽教室の先生が来てくれて、月2回ほど音で遊ぶ時間をつくっています。

音楽って、教えるものじゃなくて“感じるもの”だと思ってます。
「ぞうさん」の歌なら大きな音、「ありさん」なら小さな音。
「雷が鳴るよ!」って言ったら、みんながキャーって逃げる(笑)。
そんなふうに、音で感情を動かすんです。

大きい音、小さい音、早い音、遅い音——
それだけで、子どもたちは“違い”を感じ取ります。
そこから「楽しい」「怖い」「うれしい」といった感情を学んでいく。
それが“音育”です。

保育士さんたちも、ピアノが上手じゃなくても大丈夫。
声と体でリズムをとるだけでも、子どもたちはちゃんと感じ取ってくれます。

完璧じゃなくていい。真剣でいてくれたらいい

うちは100点満点を目指してるわけじゃありません。
でも、いつも“子どものために”を中心に考えています。

先生たちも、それぞれ得意なことや苦手なことがある。
それでいいと思っています。
大事なのは、子どもたちとちゃんと向き合おうとする姿勢。

「上手にできなくてもいい。
一生懸命、優しく関わろうとする人がいれば、それで十分。」

子どもは、大人の顔や心をよく見ています。
だから、嘘のない姿勢でいれば、ちゃんと応えてくれる。
そういう瞬間を、私は何度も見てきました。

抱っこから始まる信頼関係

私は、抱っこを大切にしています。
抱っこって求めてきたら抱っこしてあげてほしい。泣いたらもちろん抱っこしてほしい。
抱っこは、子どもにとって「安心してもいいよ」という合図です。

乳児保育って、特別なことをするのではなく生きていくために当たり前のこと(食事、排せつ、睡眠、活動、など)を、丁寧に続けること。
その積み重ねが、子どもたちの“最初の安心”をつくっていくと考えています。

これから一緒に働く人へ

保育って、“子どもを育てる仕事”と思われがちですけど、
私は“子どもと目線を合わせながら一緒に遊ぶ仕事”やと思っています。

子どもと一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に成長していける人。
そんな人と一緒に働けたらうれしいです。

花音保育園では、あなたの優しさをそのまま活かせます。
完璧じゃなくていい。
でも、子どもとまっすぐ向き合いたい。
そんなあなたを、心から歓迎します。

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